フラグラントガーデン “香る庭” no.1

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1、香りの魅力

何故、香りの良いものは、こうも魅力的なのでしょうか?
洋菓子屋さんの前を通ると、くらくらっ。スイーツの甘い香りが堪らない。
果物屋さんの前では、柑橘系の爽やかな香りや、リンゴの甘い香りに誘われてつい財布に手が伸びる。
お茶屋さんが、ほうじ茶でも煎っていれば、く~~~!喉がなる。
若い女性とすれちがえば?????
夕方の散歩道で、ジンチョウゲの香りに、うっとりと。
また、ハニーサックルやジャスミンのつる性の植物の芳香にも、心が奪われる。
通り沿いのお庭から、バラの花の香りがしようものなら、自然に足が止まる。
なかなか我が家に辿り着かないが、戻れば、緑茶に、コーヒー、紅茶、ハーブティー。
のん兵衛の小生には、アルコール類の香りにも弱い。ウィスキーにブランディー、ビール、日本酒、ワイン、焼酎、紹興酒、etc。それぞれ、どれも、なんと芳しいものでしょう!
小学生の頃、“良い香りのする消しゴム”が流行った時期があった。授業中も、消しゴムを鼻の下に当てて悦に入っていたのを覚えている。何ともフルーティな香りだった。
こうしてみると、香りという奴は植物の芳香に関係しているものが多いように思える。
金属の臭いは、あまり好まれない。鉄の臭いを嗅いだことがあるだろうか?
森に仕掛けた罠の鉄の臭いを野生動物は嗅ぎ分けるというので、私も幼い頃、嗅いでみた。
微かだが、何とも言いようのない臭いだったように記憶している。今では、小生、花粉症のため、鉄の臭いを嗅ぐことはできないのは残念だ。花粉症のためか、金(カネ)の臭いにも鈍感だ。こちらも寂しい。
嫌な臭いというのもある。生ゴミの腐敗臭などは、その最たる悪臭といってもよいだろう。加齢臭などというものも女性にとっては我慢のならないものらしい。
好き嫌いもあるようだ。出身地や国籍によっても、良い香りと感じたり、嫌な悪臭となったりもする。恐らく、経験に基づく香りの記憶が作用しているのだろう。小生は、納豆が大好きだが、クサヤは苦手だ。栗の花の香りもあまり好きではない。高校生時代を柔道部で過ごしたためか、饐えたような汗の匂いはあまり気にならない変態だ。ドクダミの臭いも嫌いではない。葉を一枚採って香りを嗅ぐと何だか元気になる。これも変態の証しか?
かび臭い本の臭いも好きだ。我ながら変な奴だ。
香り、臭い、匂い、うまく使い分けができているだろうか?

人間には五感というものがあるという。視覚、聴覚、蝕覚、味覚、そして臭覚の五つだ。
見たり、聞いたり、触ったりした時は、“なんだろう”とか“どんな意味?”とか、脳で考えることに繋がっているように思う。しかし、臭覚はとても感覚的で判断に時間差がないように思える。”失礼かも知れない”などと考える前に感覚的に瞬時に嫌な顔になる。
昼食に餃子を食べてしまった後などで、そんな経験のあるのは小生だけではないだろう。
でも、相手の方も悪気はないのだ。正直なだけだ。小生が悪いのだから仕方ない。
何冊か、関連本を読んでみたが、臭覚の構造が面白い。
臭覚というのは、五感の中でも特に記憶と深い関係があり、それは、各神経からの情報伝達経路に違いがあるためです。
視覚や聴覚、味覚、触覚といった情報は、大脳の大脳皮質と呼ばれる場所に届き、他の情報との関連の中で判断されますが、臭覚の情報は、大脳の大脳辺縁系という場所にダイレクトに届きます。
大脳辺縁系とは、本能行動(食欲、性欲、睡眠欲など)を司る原始的な脳ですが、臭覚だけは、神経から得た情報をダイレクトに大脳辺縁系へ送るため、感情や本能をより大きく、より早く揺さぶると考えられます。
つまり、臭覚の情報が入る臭球という部分は、大脳辺縁系の一部だということです。
ですから、香りの情報は瞬時に(0.2秒で)直接脳に届くのです。
この大脳辺縁系で香りを察知すると、視床下部や脳下垂体に命令を下してホルモンの分泌を促します。
ラベンダーやバラの香りを嗅いだ時、脳からは瞬時にあるα-波が出てリラックスできるのもこのためですが、同時にホルモン分泌も変わって身体の中が生理的にも変わります。なぜ、そんなに瞬時に変わるのかといえば、香りの成分が大脳辺縁系に届くスピードが視覚や聴覚系よりも早いからなのです。
“香り”って凄い。

魅力的な香りの植物と言えば、あなたなら、どんな植物を思い浮かべますか?
ある広告代理店の行った意識調査結果によると一般消費者の好きな香りの花として「バラ」、「キンモクセイ」、「沈丁花」、が上位に挙げられたといいます。

薔薇(Best.3-1)

芳香花の女王といえば、薔薇があげられます。薔薇は紀元前1200年以上も昔に、バビロンやギリシャで、観賞用として、薬用として、香料として栽培されていました。
そして、15世紀中期から17世紀中期の大航海時代を経て、アジア系の薔薇との交配で改良が進み、今のような四季咲き性のものや大輪の薔薇が生まれるようになり、さらに品種改良が加速しました。したがって、新種の薔薇は、人間によって作り変えられた傑作と言っても過言ではありません。園芸品種は、毎年数百種づつ、増えているそうです。実際に残っていくのはそのうち、1~2種類だそうですが。現在では、全五万種とも言われています。
薔薇の魅力の第一は、その花の形や色の多様性にあります。薔薇の原種は一重の5弁でしたが、エリザベス女王即位50周年の記念に命名されたイングリッシュローズ‘Jubilee Celebration’には何と、ひとつの花に花びらが120枚あるそうです。八重咲きといわれる花のほとんどがそうですが、雄しべや雌しべが花びらに変化しているのです。結果、通常の受粉は難しいのですが、美しさ優先の証となっています。元来、花びら、ガク、雄しべ、雌しべはすべて葉が由来ですので、遺伝子のハグによって、入れ替えが可能となるわけです。花の形も、“八重咲き”、“半八重咲き”、“一重平咲き”、“剣弁咲き”、“高芯咲き”、“丸弁咲き”、“カップ咲き”、“クォーター咲き”、“抱え咲き”、“ロゼット咲き”、“ポンポン咲き”と多種でそれぞれが美しい。花色も、純白から、ピンク、黄色、橙、赤、深紅、紫など様々で、ブルーや黒色の薔薇などの登場に至っています。
さらに、樹形からも、ブッシュタイプ、シュラブタイプ、ツル性タイプ、ミニバラタイプ、があり、その特性を活かして、花壇に、鉢植えで、スタンダード仕立てに、壁面に、トレリスに、アーチに、ポール仕立てに、低い棚を作ってベッド仕立てにと、様々な姿を楽しむことができるのも大きな魅力です。
薔薇の香りも素晴らしい。薔薇は、今でも香水の原料としての利用は重要で、花精油30mlを採るのに、120kgの薔薇の花を必要とするとか。その香りも様々で、大きく6種類に分けられている。“ダマスク・クラシック香”と呼ばれるのは、強い甘さと華やかさ、爽やかさを併せ持ち、心を酔わせるような香りで、一般的な香水によく使われる。“ダマスク・モダン香”は、ダマスク・クラシックをより洗練され、情熱的でコクと深みがある。“ティ香”は、グリーンバイオレットの香りが基調にあり、ソフトで上品な紅茶のような香りが特徴。
“フルーティ香”は、爽やかでフレッシュなフルーツの香り。ピーチ、アプリコット、アップルなどの新鮮な果物の香りが連想される。“ブルー香”は、ブルー系の花に特有の香りで、ダマスク・モダンにティもミックスさせたような独特な香り。“ミルラ香”は、ウィキョウ(香辛料)に似た、まろやかな甘さと清涼感漂う香りで、イングリッシュローズの一部がもつ特徴的な香りです。これらの香りを楽しむには、やや曇りがちのお天気の、朝が良い。バラ園を訪れる場合は、少なくとも、午前中がお奨めだ。しかし、近年では、薔薇の香りよりも花の色や形を重視する傾向にあるそうです。昔、薔薇の花や姿に感銘し、香りを抑えてでも、華麗な姿の花をできるだけ長く咲き誇れるように品種改良されました。花の香りは受粉のために虫を誘引するためですから、香りが弱ければ、長い時間、咲き続けることが必要となります。香りの強さと、花の日持ちは、反比例する必要性があるわけです。少し寂しい気もします。最近の切花は、花持ちや美しさを追求した結果、香りの少ないものが多くなってきましたが、ガーデン用などでは香りの強い品種もあります。さらに、花持ちも良く、香りも良い品種を待ちわびている欲深い小生です。
薔薇の歴史とともに、薔薇に名づけられたネーミングにも、薔薇の魅力を倍増させる効果を持っています。それぞれの薔薇の名前に込められたストーリーは、より一層の薔薇への愛情に繋がります。プリンセスや英雄の名前から、音楽用語や作曲家、曲名、にちなむもの。開発者やその愛人、季節や風景にイメージされるもの。期待や思いを込めて名づけられた歴史を想いながら、花を愛でるのも素敵な時間です。
歴史に残る薔薇の愛好家。
ローマ皇帝・ネロは、黄金の宮殿で夜な夜な薔薇パーティーを開催し、薔薇水のお風呂、薔薇の香油、天井から薔薇をまく仕掛け、薔薇の香りをつけたワイン、デザートの薔薇菓子などの薔薇づくしでその栄華を誇示したといわれています。世紀の美女、クレオパトラは、意中の男性アントニウスを招いたパーティーでは、部屋に50cmの厚さにバラの花びらを敷き詰めたという。
フランス王妃、マリーアントワネットは、ヴェルサイユ宮殿の庭園に美しいバラ園を築き、バラの模様を織り込んだドレスを身にまとい、一番お気に入りの「ロサケンティフォリア」というバラの香水を身につけて過ごしたそうです。自身の肖像画でもピンクのバラを手にしています。
ナポレオン妃、ジョセフィーヌは、離宮に広大な薔薇園を作り、世界中から集めた珍しい薔薇を栽培。そのコレクションは250種にも達したそうです。この薔薇園で働いていたA.デュポンという人物が、世界ではじめて人工的に薔薇を交雑させることに成功。ジョセフィーヌは薔薇の母とも呼ばれている。
時代を超え、人種や国境を越え、世界中の人に愛され続けられている薔薇ですが、見事な花を咲かせるまでの経過も、楽しいものです。一人娘を可愛がるように、水を与え、肥料を与え、悪い虫を退治して、愛情タップリに、毎日、観察する。新芽が出れば心が和み、艶やかな葉が美しく、心が弾む。蕾はもっと美しい。花が咲けば、大声で叫びたくなる。
我が家にいるのは、控えめな“プリンセス・ミチコ”と、香りの良い“パット・オースティン”です。
日本の気候にあった強健種もたくさんあります。まず、一鉢から初めて見ませんか?

キンモクセイ(Best.3-2)

キンモクセイは、中国原産の常緑樹で9~10月、樹冠いっぱいに小さなオレンジ色の小花を咲かせます。キンモクセイの一番の特長は花の放つ心地よい芳香で、日本人には最も馴染みの深い花の香りのひとつではないかと思います。
キンモクセイの剪定は、3~4月、もしくは開花後の11月です。春に伸びた新芽に8月上旬頃に花芽が作られその年の秋に開花します。花木の中では花芽形成から開花の期間が最も短いもののひとつです。秋風が吹き始め冷たい雨が降った後の帰宅中の裏道で、思いがけなくこの甘い香りに包まれる。湿度の高い方がよく香り、夜になっても香りは強い。
また、キンモクセイには四季咲き性の品種もある。白花の銀モクセイもあるが、香りはキンモクセイの方が強い。
神奈川県藤沢市の、小田急本鵠沼駅周辺の家屋の多くにキンモクセイが植えられており、花の時期にはキンモクセイのかおりが感じられる。住民の心がけにより香りが保たれている。として、環境省選定の“かおり風景100選”の中に選ばれている。
常緑で、樹木の主幹が見えなくなるほど、葉が密集して付くため、蜂の巣には注意が必要だ。温暖化が進むと関東地方でも大型の蜂の心配が増えるので尚更だ。
また、丈夫なようで、強風が直接当たるような場所は苦手なようだ。
春咲き銀モクセイがある。“オスマンサス・デラバイ”という。中国原産の2~5mぐらいに成長するモクセイ科モクセイ属の常緑低木である。葉は皮質で開花は3~4月。成長がゆっくりなので鉢植えも可能。白くて芳香のある花を総状につけるので、春にキンモクセイの香りを楽しみたい方にはお奨め。

ジンチョウゲ(Best.3-3)

ジンチョウゲは、ジンチョウゲ科の常緑低木。開花時期は2月末~3月末頃。
春、他の花たちが咲き始まるのを告げるかのように、沈香(じんこう)という香りに似た清らかで甘味のある芳香を漂わせます。ジンチョウゲは、庭に植えると臭気や邪気を払うとされてよく植えられたものです。
キンモクセイとジンチョウゲは、どちらもよく似た特徴があります。それは、どちらも、本来は雌雄異体の植物なのですが、日本では雄株だけなので実を付けることは無いということです。これには、昔中国から導入されたものが雄木ばかりだったという説と、日本の風土がすべてを雄木のみにしてしまったとの説があります。さらに、キンモクセイもジンチョウゲも、湿度が高い方がよく香り、夜もその芳香は衰えないということです。
秋と春、花の時期も異なりますが、いみじくも、“日本的だなあ”と小生は思う次第です。
秋雨じゃ!春雨じゃ!シトシトと降る雨の夜道、香りに包まれる風情を愛でることのできる日本人の心を誇りに思います。
早春に金色の手毬のような形の花が奥ゆかしい香りとともに咲くミツマタも、ジンチョウゲの仲間だ。ミツマタは中国から紙の材料として輸入されたものだ。花は、3~4月頃になると、外側が白色で、内側が黄色の小花が集まって半球状に咲きます。花には、良い香りがあり、ちょっと、うつむき加減に咲く様子が愛らしい。花の内側が赤くなるベニバナ種もあります。

2、芳香性の植物(1)

薔薇

日本でも、薔薇愛好家による薔薇ブームが再燃しているようだ。
5月~6月、四季咲き性なら10~11月は、薔薇の花の最盛期となる。お近くの公園でも、植物園でも香りも良く芸術品のように美しい花が咲き誇ります。また、ご近所、お隣のお庭でも、ご自慢の薔薇が咲きだします。一言、お掛けになってみては如何でしょう。“素敵ですねえ!”の一言から、新たな発見やお付き合いが深まるかも知れません。
香りの良い薔薇のご紹介です。

香水の原材料にも使われるピンクの八重咲き種、・ロサ・ダマスケナ。
八重咲きで白い花でレモンの香りを持つオールドローズ、マダムアーディ。
香水の原料にもなるフルーティな香りの薄オレンジ色のロゼット咲き、エブリン。
ピンクから中央部分がオレンジ色の花で、放射状に広がる平咲き、フルーティな香りが強い、フェスティバル・デ・ジャルダン・ドゥ・ショーモン。
フルーティな香りがある上品なピンクの花で、端正なカップ咲き、・ヘリテイジ。
東洋の薔薇と中近東原産のダマスク系の薔薇を交配させた淡いピンク色、スブニール・ラ・マルメゾン。
ピンク色のロゼット咲きが美しく、官能的な香りの、グレイス。

ハマナスは、本州北部から北海道にかけての海岸に自生し、潮風と寒さに強い樹木です。
6月から9月にかけて花と実が楽しめる。花色は通常、濃いピンクだが、白花のものもあり、枝の先端に咲く濃桃色5弁の花が美しい野生のバラです。花には強い芳香があり、かつては天然香料に使われたようです。「ハマナス」の名の由来は秋に熟する赤い果実をナシに例えた「浜梨」が東北地方でなまってハマナスになったといわれています。
ツル性の薔薇の楽しみ方は多様だ。フェンスやトレリスに絡ませたり、アーチやパーゴラに仕立てるのも良い。レンガの塀や家の窓まわりを飾るのも素敵だ。一本のポールを建ててのポール仕立ても場所をとらずに庭のポイントになる。枝垂れた枝に空中で花を咲かせるスタンダード仕立て。枝が横に這うように広がる薔薇ならグランドカバーのように。ガゼボなどを使ってドーム状に仕立てるのも夢の様だ。また、樹木の幹に直接絡ませても面白い。 芳香の良い薔薇のアーチをくぐると、別世界のようなイングリッシュガーデンが広がる。何とも華やかで、優雅な景色だろう。憧れの世界だ。
また、ツル薔薇とクレマチスを開花時期をずらすように混ぜて植えると、季節を問わず楽しめる。
ツル性で香りの良いのは、

ロサモスカーナ・・・原種に近いツル性の薔薇で、3~4cmの純白の花を咲かせる
クレア・オースティン・・・四季咲き性、カップ咲き。レモン色の蕾がゆっくり開いていくとディーブカップのクリーミーホワイトへと変化。強いミルラ香(奥深い甘さと苦さが交じり合ったような香り)がある。
カスタード・・・黄オレンジと言おうか黄金色と言おうか、丸弁八重咲きで春から秋まで繰り返し咲く花は目を見張るものがある。芳香もあり、優れている。
アンバータイン・・・香りの良い薄ピンク色の半八重咲きで、照り葉も美しい。強健種で育てやすい。
つる・ブルームーン・・・紫花で、高芯剣咲き、四季咲き性があり、香りも強く強健種。
ブラッシュ・ノアゼット・・・ポンポン咲きでほのかなピンクの入った白花で四季咲き性で秋遅くまで開花する。また、しなやかな枝にはトゲが少ないのも嬉しい。
マルティーヌ・ギヨー・・・淡いベージュ色からピンク色のカップ咲きで、ころんと丸い花形を保ったまま、緩やかに花を開く。典型的な薔薇の香りにスミレやライラックの香りを感じる芳香種。半つる性で強健。
ドンファン・・・花はベルベットのような光沢を持つ濃紅色で花径は約13cmと大輪で半八重咲き。四季咲き性で春から秋まで咲き続ける。
つる・サーカス・・・花径5~6cmの半剣弁の高芯咲きで芳香があり四季咲きです。特徴は花の色にある。咲き始めは濃黄色ですが、ピンク、赤色へと変化します。名前に納得です。
メアリー・ローズ・・・花径8~10cmのピンク色の丸弁八重のカップ咲きで香りも濃厚です。四季咲き性でもあり、優れたイングリッシュローズと言える。枝はしなやか。
アブラハム・ダービー・・・花径10cmの丸弁のカップ咲きで、花色は淡いピンクで花の中央は濃いピンク色。5月頃から秋まで繰り返し咲く。フルーツ香も強く樹盛も強健。
グラハム・トーマス・・・花径7~9cm。アンズ色を帯びた黄色の丸弁八重咲き種。花には強いティーローズの香りがある。半日陰でも生育がよい強健種。
ルイーズ・オディエ・・・花径10cmの大輪で、丸弁のカップ咲きで中心がロゼット咲きになります。花色はローズピンクで強い芳香があります。
ラ・ネーヌ・ビクトリア・・・花径8~10cmの大輪で、丸弁のカップ咲きで中心がロゼット咲きで、春から秋まで咲き続けます。花色はローズピンクで強い芳香があります。
バフ・ビューティ・・・花径9cmのアンズ色で八重のカップ咲きです。花には爽やか、華やかな香りがあります。花期は春から秋。
ノイバラ・・・日本に自生する原種で、花径2.5~3cm。花色はピンクがかった白色で、丸弁が5枚の一重咲き。中央の黄色い雌しべが印象的です。香りも良く、秋に赤く実ったローズヒップも美しい。
キュー・ガーデン・・・半直立性の一重咲きだが、優しいレモンの香りを放ちながら非常によく返り咲きます。

3、芳香性の植物(2)

ジャスミン

ジャスミンはモクセイ科・ジャスミン属の総称であり、これらから採れた香油の名前になっています。ジャスミンの名は、ソケイ(素馨)、マツリカ(茉莉花)として、中国と日本で使われてきました。また、ソケイとマツリカの2種は古代エジプトで香料の原料としてすでに栽培されていた。
しかし、”香りが似ている”とか”花が似ている”とかで、ジャスミン属以外の植物にもその名が使われて、少々誤解され易くなっています。それだけ、多くの人に親しまれているということの裏返しでしょうか。

ジャスミン(モクセイ科・ジャスミン属)

別名ソケイ。非常に甘美な香りを持ち、香水の原料として栽培されるモクセイ科のツル性常緑低木。花は白色で花芯が薄黄色。

オオバナソケイ(モクセイ科・ジャスミン属)

別名: コモンジャスミン。5から11月に白い筒状の花をつける。パキスタンの国花。香水に使用される。
ハゴロモジャスミン(モクセイ科・ジャスミン属)
熟成した女性の香り。中国原産。春先にピンク色の細長い蕾を無数につけ、花には強い芳香。常緑ツル性。花期は3月、4月ごろ。

アラビアンジャスミン(モクセイ科・ジャスミン属)

別名: マツリカ。香料植物として古くから知られる熱帯の常緑低木で、5月頃から香りの高い花をつけます。香りはジャスミンの中でも最強で、中国茶などでおなじみです。7月が最花期で、香りは夜も漂って、花の白さは夜目にも明るく見えます。

ウィンタージャスミン(モクセイ科・ジャスミン属)

別名: オウバイ(黄梅)。花期は2~4月、葉が出る前に径3cmほどの黄色い花を咲かせます。香りはほとんどない。

マダカスカルジャスミン(ガガイモ科)

マダガスカル島原産のガガイモ科のツル性常緑樹。純白の花の形と香りがジャスミンに似ているのでこの名前に。アケビのような実がなる。

カロライナジャスミン(マチン科)

北米のノース&サウスカロライナ州が原産地のマチン科のツル性の常緑低木で、ジャスミンのような甘くて強い香りを漂わせるので、この名前となった。

キソケイ(黄ソケイ、木ソケイ)(モクセイ科・ジャスミン属)

レモンイレローの花が咲くジャスミン。開花時期は初夏で切り花や庭木に適している。香りは無い。常緑低木。名前の由来は、黄色のソケイ?木になるソケイ?

スタージャスミン

和名: ホシソケイ(星素馨)東南アジア原産の常緑低木。ブッシュ状に育つ。芳香のある白い星型の花を咲かせる。生垣や庭園樹に向く。

ヤナギバジャスミン(ナス科)

葉が柳の葉のように細い落葉性低木です。黄緑色の管状の花は、夜に芳香を漂わせます。シルクジャスミン(ミカン科)
別名ゲッツキ(月橘)。シルキーな小花にジャスミンに似た香りがあるのでこの名前。沖縄では月橘、中国では十里香という。耐寒性は0℃。霜に注意。

インド夜香木・ナイトブルーミングジャスミン(クマツヅラ科)

和名: ヨルソケイ。直射光を好みます。最低温度は0℃。熱帯アジア原産の常緑小高木。花がジャスミンにそっくりで、夜に咲いて翌朝落下するため、この名前に。

アメリカジャスミン(ナス科)

別名: ニオイバンマツリ。お馴染みの、花色が紫から白へと変化するあの娘です。
花は4月から7月頃。耐寒性常緑低木。
etc。

日本で一番よく見かけるのは、強い芳香の“ハゴロモジャスミン”だ。つるを長く伸ばし、その先端に30~40輪の花をまとめて咲かせます。
蕾はピンク色をしていますが開くと白色です。花には強い芳香があり、満開の時期は少し離れたところからでも香りが漂ってきます。
日当たりが良く、霜の降りないような場所選べば、植えっ放しで大丈夫です。
香りも強いが、樹勢も常緑で強い。花後に、咲き終わった枝を剪定しますが、長く伸びた枝や樹形が乱れた場合は、すべての枝を半分ぐらいまで強剪定します。春から秋までの間に伸びるので、思い切った切り戻しが長年に渡り、楽しむコツです。
“ジャスミンもどき”も、興味ありますね。
シルクジャスミン・月橘は、花の無い時期は艶のある葉が、シマトネリコを小型にしたような感じで、ジャスミンのイメージとは程遠い。しかし、白い小型の花が咲くと香りが良く、名前の所以を思い出す。
香りのある植物は、視覚でも臭覚でも、楽しめる。2倍もお得だ。お試しあれ!

ユリ

切り花の一本だけでも、むせ返るぐらいの存在感のある芳香を持つのは“ユリ”だ。
日本原産のユリは数多く、ササユリ、ヤマユリ、鉄砲ユリ、ヒメユリ、カノコユリ、スカシユリ、タモトユリ、など。どれも香り豊で美しい百合ばかりだ。この日本原産の百合達も、薔薇と同様に、プラントハンター達によって海外へ渡った。時代は江戸時代。その後、ヨーロッパで品種改良が進み、カサブランカ(鉄砲ユリが源)などのハイブリッド種が多種類出回っている。明治時代には、山採りのヤマユリ、ササユリ、オニユリなどの輸出が始まった。ユリの輸出が本格化されたのは、明治の初めにドイツ人ボーマーにより設立されたボーマー商会による。山採りのヤマユリやササユリなどを集荷し、横浜港から輸出した。その後も輸出は拡大し、大正時代には日本の重要輸出品に指定されるまでになる。昭和に入っても輸出はさらに拡大し、第二次世界大戦で一時途絶えたが、戦後も“ヤマユリの買い付け人”なる人が農村をまわり、山採りの球根を買いつけては輸出していたほどだ。野生のユリのほとんどがウィルス病に弱いため、増殖が難しかったことも手伝って自生するヤマユリが激減した。遠い昔から日本人に愛され続けているヤマユリを県や市のシンボルフラワーにしている都市も多く、神奈川県や東京都八王子市もその中のひとつだ。昔はヤマユリが群生していた東京都八王子市の高尾山では、八王子市と有志市民、京王電鉄などが“ヤマユリの里の復活”を目指して活動している。
近年では、ユリの愛好家達の努力(ウィルスとの闘い)によって、ヤマユリをはじめ、種子繁殖による増殖の工夫が進んでいる。種から育てる利点は、ウィルスから一度無菌化されていることにあるが、生育途中にウィルスに感染しないよう、様々な工夫が必要だそうだ。
生育環境では、ヤマユリやササユリ、カノコユリ、カサブランカのようなオリエンタルハイブリッド系のユリは、明るい半日陰を好み直射日光が苦手ですが、テッポウユリ、スカシユリ、ヒメユリ、リーガルリリーなどは、日当たりを好みますが、根元の土には直射日光が当たらないように地表を覆うような下草を植えたりして、土の温度を低めに抑える工夫をすると良い。
また、比較的栽培が容易なユリには、テッポウユリ、オニユリ、リーガルリリー、カノコユリ、などがあります。
大きめな木の小陰に、秋植えの球根植物として4~5球植えて楽しみたい。
初夏、香りとともに、真っ白で大型の花が、凛として咲く姿は、懐かしくも新鮮でもあり、何時間でも眺めていたい。先ずは試してみては如何だろう。

ヒヤシンス

同じユリ科の植物で馴染み深いのは、小学校で水栽培をしたヒヤシンスだ。テーブルの上に置かれたフラスコ栽培のヒヤシンスやクロッカスは、その甘い香りとともに、花色でも春の訪れを告げてくれます。球根植物は、成長に必要な養分とともに、茎や葉、花になる組織までを球根の中にすべて供えています。それなので、水と日光だけでも、花を咲かせるまでに成長できる訳です。水栽培でひげ根を出し、葉を出し、茎を伸ばし、花を咲かせて、たくさんのエネルギーを使った球根は、花が終った頃によく見ると、シワシワ。
可哀想なぐらいシワシワ。まるで、親戚のおばあちゃんの様。
花が終ったら、葉は大切に残し、花茎を切り取って、土に戻してあげましょう。光合成で養分を球根に貯めこむお手伝いをしてあげてね!葉も枯れてきたら、掘り上げて来年に備えます。または、ヒヤシンスは地に植えっ放しにされるのはあまり好きではありませんが、花を楽しんだ後は、花を落としてから地植えにし、乾燥気味に育てれば、花や株は小さいながら、何とか育ってくれます。

チュウリップ

ユリ科の球根植物で、忘れてはならないのはチュウリップです。
チュウリップと言えば、オランダが有名ですが、これも品種改良が重ねられて、投機の対象にもなった植物です。チュウリップを植えるとなると、何千株ものチュウリップ畑がイメージされます。公園や学校の花壇にはお似合いかも知れませんが、我が家のお庭には、ちょっと派手すぎて・・・。とお思いの方も、5~6球なら?
小生は、クルシアナ・レディジェーンという原種系の種類が好きです。淡い桃紫と白のリバーシブルの細長い花が4~5月に咲きます。草丈は20~30cmと扱いやすく、植えっぱなしでもOK!
オレンジ色の芳香種でバレリーナという種類もお奨めだ。
お子様のいる家庭なら、是非とも植えてあげてください。

スイセン

球根植物が続きますが、スイセン(ヒガンバナ科)も良い芳香の花が多い。
伊豆半島の爪木崎半島・先端のスイセンの群生は見事だ。青い海と白い灯台、起伏のある地形。白い花びらとラッパ状の黄色の副花冠が綺麗な日本スイセンの絨毯。雄大な景色だ。
芳香性のスイセンでは、スズランによく似た白い花を咲かせ、花弁の先のほうに緑色の斑点があるスノーフレーク。副花冠は平たく円盤状でヒダがあり、縁がまるで口紅を塗ったように紅色になっている口紅スイセン。18世紀から香水の原料用に栽培されている甘美で房咲きの黄スイセンのジョンキル。etc。
ヒヤシンスに似た葉っぱの間から花茎を立てて、何とも言えない可愛いベルのような青紫のお花を吊るして咲くツリガネスイセンというのがある。ユリ科シラー属のヒヤシンソイデス・ヒスパニカという素敵な名前を持っている。4月~5月頃に開花するのだが、これがまた愛らしい。変種に白花もあるが、小生はブルーが好きだ。
これも大きな木の下で、日陰になるような場所に秋に植えたい。一度植えたら植えっぱなしで良い。

フリージア

アヤメ科の秋植えの球根植物で南アフリカ原産のフージアの香りも素晴らしい。
花は4~5月、穂状でやや垂れ下がります。花色は赤~黄色・紫・白色があります。
最近は従来の一重咲きタイプだけでなく八重咲きタイプが増えました。強く香るのは原種に近い黄色や白系の品種です。フルーティな甘い香りの代表品種はアラジン、ラインベルト、オレンジーナ、フィガロなど。スパイシーな香りの代表品種はエレガンスなど。
フリージアは連作障害を起こしますので、花が終ったら花茎を切り取り、葉が枯れるまで充分に日光に当てて来年の養分を球根に貯めさせます。葉が枯れたら掘りあげて10~11月に別の場所に植えましょう。フリージアの生産は八丈島が有名ですが、毎年3~4月にかけて、“フリージア祭り”が開催されています。

ヒメノカリス

ヒガンバナ科のヒメノカリス(英名: スパイダーリリー)は非耐寒性の球根植物で、ホワイトで個性的な花形とバニラに似た良い香りを放つことで知られている。
高温を好む大型(草丈は50~60㎝ほど)の春植え(4月)球根です。花の形がユニークで、初夏(5~6月)に優雅な花を楽しむことができます。
英名のスパイダーリリーのとおり、花姿は特徴的で、中心部分は薄い膜を張ったようになり(副花冠と言います)、中心から放射状に細長い花びらを伸ばします。その様子が蜘蛛の足のように伸びます。もっとも、蜘蛛の足は8本、スパイダーリリーの長い花びらは6本ですがね。品種を限定するなら、ヒメノカリス・スぺシオサがお奨めです。
翌年も花を咲かせるために枯れてきた花はこまめに摘み取りましょう。花が終わって葉が半分以上枯れてきた頃に球根を掘り上げます。風通しの良い場所で陰干ししてまわりの土や枯れた葉をよく落とし、乾いたバーミキュライトやおがくずを入れた鉢や袋に球根を上下逆さまにして入れ、植え付け時期の4月まで凍らないような場所で貯蔵します。

ヘメロカリス(デイ・リリー)

山野草のノカンゾウ、ニッコウキスゲ、ユウスゲが品種改良された園芸品種です。ユリ科の仲間ですが、球根草ではなく宿根草になります。花は6~7月に、朝に咲いて夕方にしぼむ一日花ですが、香りの良い卵黄色の花を次から次へと咲き続きます。強健で育てやすく繁殖力も旺盛です。日当たりのよい所を好みますが、耐陰性があるので午前中の日光が当たるような半日陰でもよく花を咲かせます。放任も可。

チューベローズ(月下香)

チューベローズというリュウゼツラン科の球根植物があります。別名をゲッカコウ(月下香)といい、メキシコ原産といわれています。草丈1mくらいになり、8月頃、夕方から白い穂状花序をつける。花穂は45cmくらいになり、香りがよく、複雑でエキゾチックな甘いフローラル系で、とくに夜間は香りが強い。園芸種は八重咲きのものが多いが、一重咲きの方が香りが高い。香りは神秘的でもあり、香水の材料としても使われます。
秋に地上部分が枯れた頃に掘り上げて、風通しの良い日陰で完全に乾かしたあとにバーミキュライトとともに、箱や袋に入れて室内の暖かいところで保存します。球根の状態で休眠していても枯らさないためには10℃くらいの気温がほしい。 丈夫に育てるためには肥料が不可欠です。植え付けるときに、あらかじめ土に化成肥料1にぎりと油かすを混ぜ込んでおく以外に、追肥として6月と9月に1回ずつ肥料を与えましょう。6月の肥料はしっかりと生長させて開花に備えるため、9月の肥料は花後に球根を太らせるためです。球根の大きさも大切です。球根は小さなものだと花が咲かないので購入する時は注意が必要です。球径4cm高さ6cmくらいで30g以上の球根が適しています。
環境の違う場所で育てるには、それなりの面倒をかけることが必要だということですね。
しかし、月明かりの夏の夕方から夜にかけて、夕涼みのデッキやパティオに出ると、チューベローズの甘い香りが漂っているなんて、リゾート気分にも浸れそうで、試してみたい。